編集・発行人 安東 博 Address 〒719-35 岡山県阿哲郡大佐町田治部3245 Tel & Fax 0867-98-3470 E-Mail address h-andoh@mx1.tiki.ne.jp


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約8ヶ月ぶりのご無沙汰ですが、皆様はお変わりございませんか?私は毎日を死ぬほど元気に過ごしております。  いつの間にか鳥取から可愛い後輩がやってきてしまい、最初はちょっとドギマギしてしまぁ、昔と同じようにすればいい、と思っています。
 さて、この不定期新聞もこの春で4周年を迎えることが出来ました。現在、全国50数ヵ所に送っています。 北海道から九州まで。最近ではFax、パソコン通信でも同じ原稿を発信しています。 今号からは、新たに物語を掲載しています。今回は読み切りの短編です。



お話


 目覚めると私はむせかえるようなバラの香りに包まれていたわ。辺りを見渡すと、マゼン ダのビロードが周りを取り囲んでいるわ。よく目を凝らすとそれらには、クリスタルの粉 のように小さな霧がついて、朝の陽光を受けてステンドグラスのように輝いているの。
私は立ち上がってみたの。すらりと伸びた3対の足。けして長いとはいえないけれど。つ づいて私は羽を広げたの。紫に白とべにの紋。朝日の温もりで私の体は暖まり、次第に力 が湧きあがってくるの。

 朝食のために私は羽ばたき、宙に舞い上がったの。私を招くように、向こうから甘い香り が匂ってくるのよ。まずはオードブルのすみれのジュース。朝露で味が薄くなっているの 。この時間はどれもおなじよ。ちがうのは下をむいて咲く百合くらいだけど、ちょっと季 節が早すぎるわ。その頃になると、クヌギのレストハウスも繁盛し始めるの。けれども今 の季節は、そういった美味しいものを食べさせてくれる店は開店していないの。季節営業 だって。メインディッシュは、れんげのジュース。人間という野蛮な生き物が、このご馳 走を根絶やしにしかけときは私たちの命も危うかった、とおじいちゃんからきかされたわ 。その人間たちがようやく最近になってさ、自らの行いを改めようとしだしているの。も う遅すぎるわ。偉大なる神パンゲアはお怒りになって、罪もない私たちまでもお苦しめに なるの。悪いのは、あの忌々しい人間たちだけなのに。

 こんなことを考えていたら、せっかくの朝ご飯がまずくなっちゃった。おっと危ないわ! 南の国からもう私たちをねらってタキシードを着た一群がやってきているわ。これからの 季節は、私たちを襲うものがふえて困るのぉ。おちおち昼寝もできやしないわ!おう、向 こうでは私のお友達が草の枝の上で食べられているわ。なんと惨いの! 生きている体を 縛って動けなくしているの。あのあと体液を吸ってしまう、って誰からか聞いたことがあ るわ。どうせ殺されるのならば、一思いに絶ってほしいわ。首を鎌で刈られてもいいから 。

 むこうのほうから、私をいざなう香水の匂いがするわ。私にプロポーズの合図を送ってい るようね。どんな奴なのか私は香りのする方へ用心しながら飛んでゆくの。匂いで誘って 私たちを食べてしまう不届き者がいる、とおかあさんから注意するように言われているの 。またおかあさんは、決して初対面のものと交渉してはなりません。なるべく強そうでた くましい、そして頼りがいのあるもの選びなさい、と。けど、それって難しそう。

 私はチューリップの花のかげから香水を振りまいている相手を見つけたわ。私と同じ種族 のよう。羽の紋に、私にはない色あざやかな緋色の斑点が入っているの。あれは異性のし るし。私の体が急に熱くなってきたわ。羽がひとりでにふるえだしてきたわ。体のどこか らか私のかいだことのない香りが出始めたの。私よりも二回り大きいその相手が、この私 の匂いに気づいたようで、辺りをしきりと飛び回っているの。私の体は、おかあさんの言 いつけにそむいて、その方向へ飛び立ってしまう。もう、体が自分のものでないような感 じ。ああ、いい気持ち! 私たちは花たちの中を飛び回り、上へ舞い上がっては、また下 へ降りてゆき蜜を吸っては舞い上がる。お互いに気分を高ぶらせてゆくわ。もう私はたま らない! と思った瞬間、二つの体は一つになっていたの。それを横から見るとハートの 形になっているのだよ、と優しいおばあちゃんが教えてくれたことが、ふと頭に浮かぶの 。私たちは一体になった体をといて、気だるさを覚えながら一つ花の蜜を一緒に吸ったわ 。なんと美味しいこの味。なんというさわやかな気持ち。いままで感じたことのないこの 嬉しさ。

 私のこの気持ちをおかあさんも味わったのだろうか? そして私の子供たちも同じように するのだろうか? どうか偉大なる神パンゲア様。この営みが永遠に続きますように。そ して、あの忌々しい人間達が私たちの世界に勝手に入ってこられないように、どうかその 偉大なる力でお守りください。私たちのほうがあのもの達よりもあなた様の側にいるのは ずっと長いのですから。

おわり

インタヴュー

 今回、インタヴューに応じて下さったのは'88年の7月にKさんと一緒に出した 合同詩集「風によせて 花によせて」の中から数編の詩に曲をつけて下さった、関 島さんです。

-------- 関島さんがハンディを持った方と出会われたのはいつですか?

 小学校の時に、学校の校舎とは別なところに特殊学級がありました。そこへは、 15人ほどいたと思います。それが一番最初でした。
それから大学の時に地元の熊本にある施設に行ったことがあります。そこでは、陶 芸とか木工品を作られていました。

-------- シンガーソグライターでいらっしゃいますが、いつ頃から歌に興味をも たれたのですか。

 高校生の時に友人と一緒に、ピターポール&マリー、キングストーズ、日本のも のは、赤い鳥、かぐや姫、小室 等などのコピーをしていました。大学に入ってか ら、自分で曲を作ったりしました。

-------- 私も、先輩の影響でよく聴いていました。ところでプロになったのは、 何歳ごろですか?

 24の時です。最初は音楽事務所に所属していました。

-------- ではずいぶん長いんですね。ところで、私たちのような障害者の詩に出 会って曲をつけたきっかけは?

 友人の結婚式にでるために岡山に行き、式の前日にみんなで呑んだんですよ。そ のときに友人の友達で障害児の施設に勤めているYさんと知り合いました。

それからしばらくして、YさんからCさんの詩が届いたのです。そのころ僕が担当 していたラジオ番組を聴いて、送ってきたんだと思います。

-------- 聴かせてもらったことがあります。それで、現在はどのような活動をさ れてるんでしょうか?

 今は、家を滋賀にたてて地元のラジオやライブを中心に活動しています。機会が あればそちらへでも行きますよ。

-------- それでは、今日は有り難うございました。これからもいい歌をたくさん 作り続けて下さい。

 関島さんはとても素敵な方で、電話でのインタヴューにも快く応じて下さいまし た。もっとお伺いしたいことが多くあったのですが、インタヴューするのが下手な せいか話が横道にそれてしまい、脱線することが多くありました。もっと聞き上手 の勉強します。


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